ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年4月28日

「後葬(あとそう)」って何だろう?

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

ネットで葬儀を仲介する業者が「後葬(あとそう)」という「新サービス」を開始したと報道されています。新型コロナウイルス感染リスクにより、お別れをしたい方々がご葬儀に参列できず、ご遺族の望む形のご葬儀ができない現状を踏まえ、後日改めて2回目のご葬儀を行えるようにするサービス、とのことです。

弊社でのご葬儀も状況は同様で、ご親族さえもお呼びすることが憚られ、少人数で見送る選択をせざるを得ないケースが急増しています。先日は、ご家族への感染リスクを回避したいというご要望で、喪主様お一人で送るご葬儀のお手伝いも致しました。

この「後葬」の内容を要約すると、

・感染防止のため、少人数で火葬まで行う。(1回目)

・後日、お呼びできなかった方々とお別れの時間を共有する場(葬儀・告別式)を設ける。(2回目)

ということになっています。

実は、この形式は私には「新しい」ものには思えません。すでにごく普通に行っている形だからです。

信州長野県は、そのほとんどの地域が火葬をしてから葬儀・告別式をする「骨葬(こつそう)」地域です。そのため、火葬だけで済ませたいという方を除き、ご葬儀プランは「お通夜→火葬→葬儀・告別式」という形で成り立っています。お通夜と火葬はご家族やご親族を中心に執り行い、ご縁のあった多くの方々は葬儀・告別式にお越しになり、共にお別れの場を共有するという形です。その中には、何かのご事情で葬儀・告別式が先延ばしになる場合もありますので、2回葬儀をする必要性はそもそもありません。まだ未決定で人数によって変動する返礼品や料理費用を除けば、もちろん余分な費用が発生する余地はありません。私共葬儀社は、ご遺族のご要望に添う日程での葬儀・告別式の準備を待つだけです。

確かに、急激な感染リスクの高まりで、共にお別れの時間を過ごしたいとのお気持ちに応えられないケースが増えていることを、私も危惧しています。かけがえのない大切な故人の死という現実を受け止め、受入れ、ご縁のあった方々がご自身の心の中に新たな存在として位置づけていくグリーフワーク(喪失の悲しみや痛みを癒すプロセス)のスタートとなるご葬儀が、その機能を十分に果たせなくなっているかもしれない状況を懸念しています。ただ、その対処方法として、この「後葬」が「新サービス」として取り上げられることには違和感を覚えます。なぜなら、様々なご事情で火葬後すぐに葬儀・告別式が行われず先送りになることは、私たちの地域では決して特別なことではなく、これまでもごく普通に行われてきたことだからです。ですので、わざわざ「新サービス」に申し込み、2回目として行う必要性があるのだろうか、との疑問を拭い切れません。

私の感覚では、新型コロナウイルス感染リスクで影響を受けるご葬儀の状況から提案された「後葬」という「新サービス」は、これまで地域によってはごく普通に行われていた「骨葬」の形式になり、葬儀・告別式の日程が「収束後」という未確定で少し長い繰り延べになったものと捉えています。だとすれば、これは決して「新しい」ことではなく、当初から「葬儀・告別式は収束後に」という心づもりで葬儀社とお打ち合わせさえしていただければ、特別な事態として考える必要はないと思います。事実として、弊社では火葬まではご家族で執り行い、「葬儀・告別式は後日収束後に」というご遺族のご要望を現在も数軒承っています。

同時に、仏教でのご葬儀では、その後にご法事というご供養の機会がすでに用意されています。(浄土真宗では、追善供養という捉え方はしませんが。)四十九日、ご新盆、一周忌、三回忌…この感染拡大がいつ収束するのかはわかりませんが、仮に1年程度だとすれば、ご縁のあった方々を一周忌にお呼びして、改めて故人のことを語り合い、お別れの気持ちを共有する場とすることも可能だと思います。

故人とご縁のあった方々のお別れしたいお気持ちにすぐに寄り添えないことは残念ですが、一度立ち止まって、火葬後に葬儀・告別式をする「骨葬」になったのだ、と捉えていただければ、またこの先のご法事の機会を、お別れにお越しいただく場として改めてお考えいただければ、必要以上の不安を抱えずに済むのではないか、と私は考えます。