ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年3月26日

私の好きな仏教由来のことば ~倶会一処(くえいっしょ)~

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

我が家のお墓のお石塔には「倶会一処(くえいっしょ)」という言葉が刻まれています。

倶に(ともに)、一つの処(ところ)で会う。

この言葉は「仏説阿弥陀経」の中にあり、阿弥陀様のお浄土で共に会わせていただく、という意味だそうです。亡くなられた方々が、皆一緒にお浄土(彼岸の世界)で会っている、そして自分もいつの日か、同じお浄土で改めてご先祖たちに巡り合う…そのイメージは、お墓という対象にとても似つかわしく思います。

写真と話でしか知らない創業者の祖父、幼い頃から最も長く時間を共に過ごした祖母、会うたびに「最近はどうだ…」と気にかけてくれていた書道家の伯父、私の志望大学合格に祝電を送ってくれた直後に急逝した伯父、いつも酒臭く赤ら顔で、私の名前の一文字になったご近所の村田のおじさん、こちらも同じく私の名前の一文字となった祖父の友人で元市長さんなどなど。亡くなった父は今頃、先に逝って待っていた家族や地域の先輩方に迎えられて、私が幼い時分に見ていたような様子で再会している…。お墓に手を合わせると、そんな姿が自然と思い浮かびます。その人たちの表情は、誰もがどこか楽しそうで穏やかです。

もちろん、私はお浄土の世界を知るわけではありませんし、死を経験していませんので、そこでご先祖が本当に出会っているかどうかもわかりません。でも、かけがえのない大切な方々と、きっとまた一緒に会えるという考え方は、私たちの喪失の痛みや悲しみを支え、いまの命を精一杯生きていく力を与えてくれるものだと思います。