ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年3月19日

気持ちは伝わる

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

新型コロナウィルスの影響で、日常生活が日常でなくなる「異常事態」が日本中で、世界中で続いています。その状況下で、地元の小学校での卒業式が行われました。ご存知のように、ここ信州でも例年とは異なり規模を縮小した、内容も時間も短縮した卒業式となりました。私は市の教育委員をたまたま仰せつかっているので、主催者の一人として出席しました。

子どもの参加は卒業生のみで在校生は不在、保護者は各家庭1名に限定され、挨拶は校長式辞だけ、そして全員がマスク着用という「異様な」形式となりましたが、一時は開催も危ぶまれただけに、とにかく開催ができたことにホッとしながら会場の体育館に入りました。

入場する卒業生20名全員が揃ってマスク姿、卒業証書授与も卒業生の歌もマスクのまま…。妙に広く感じる体育館で静かに淡々と進む式の途中までは、そんな卒業生の姿にただただ「こんな卒業式にしかできなくて、ごめんね」と心の中で思い続けるばかりでした。

しかし、最後に先生たち全員が一斉に立ち上がり、卒業生に向けて送る歌を歌い始めると、会場の空気が突然一変したのです。もちろん、例年の卒業式でも同様のことは行われますし、先生方もマスクを着用したままの姿であることに変わりはありません。それなのに、その歌声がいつも以上に力強く、卒業生への本気の思いが会場全体を覆いつくすエールとなって響き渡るように感じられたのです。

気がつくと、歌い続ける先生方の真正面で向き合う卒業生の何人もが涙を拭っています。その向かい側で、それまでは撮影に熱心だった保護者の皆さんもハンカチで目頭を押さえています。私も、卒業生や先生方の姿をこれ以上見つめることができず、天井を見上げて、なんとか涙を堪えるのに必死でした。(終了後に聞くと、先生方の歌は卒業生には内緒のサプライズだったようです。)

様々な制約を受けた例年と違う「異様な」卒業式。でも、その状況の中で、いやその状況だからこそ、卒業生のために自分たちのできる限りのことを精一杯してあげたい。先生方がどれほど強くそう願い準備をしたのか。その気持ちの表れが、最低限の形式でしかなかった卒業式を、むしろ例年以上の卒業式へと変えていました。

たとえどんな状況にあっても、相手への気持ちは伝えられる、そして必ず伝わる。先生方のその姿に、改めてそう教えられました。