ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2020年1月5日
大阪・四天王寺 ~和宗(わしゅう)という選択~
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
参道の入口で、ショウガ入りの甘酒を買って向かった大阪・四天王寺。
聖徳太子が593年に日本最初の官寺として建立したとされる、1400年の歴史をもつ寺院です。
日本書紀によると、崇仏派の蘇我氏と排仏派の物部氏が争う中、聖徳太子が自ら彫った仏教の守護神四天王に戦勝を祈願し、勝利の際には四天王を祀る寺院を建立し人々の救済を目指すとの誓願を立て、崇仏派が勝利した後、その誓いを果たすために建てられたそうです。
四箇院という施設もあり、教育や医療、福祉施設の役割も果たして多くの信仰を集めました。福祉施設は日本最初、とも言われています。
今回初めて知ったのですが、この四天王寺は「和宗(わしゅう)」を名乗っています。
聖徳太子が創建した当時の日本には、まだ宗派という概念はありませんでした。
南都六宗と呼ばれる奈良時代にも、六宗のいずれにも属しませんでしたが、平安期になり、最澄が聖徳太子を誰よりも師として崇拝していたこともあって、徐々に天台宗との関係を深め、太平洋戦争敗戦までは天台宗に属していたそうです。
しかし、敗戦後の1946年、建立当初の基本に戻ろうと、どの宗派の方でもお参りできるよう天台宗から独立し「和宗」となりました。「和宗」の名称は、十七条憲法の“和を以って貴しとなす”から名づけられました。
確かに、それを証明するかのように境内には浄土真宗開祖の親鸞聖人像も、真言宗開祖の弘法大師像も建てられていました。
一般社団法人お寺の未来が2016年に実施した「寺院・僧侶に関する生活者の意識調査(全国20~79歳の男女1万人対象)」によると、特定のお寺の「檀家である」と認識している方は全国的には僅か29%、「檀家でない」と回答した方は54%になります。(もちろん地域差はありますが。)
もはや大多数が特定のお寺の「檀家でない」時代。ですが、お経を上げてもらって故人を送りたい、供養したいという方々は、まだまだ大勢いらっしゃるように感じています。
四天王寺が掲げる「どの宗派の方でもお参りできるよう」との願いを込めた「和宗」という選択は、もしかしたら、これから時代の中で魅力を増していくのかもしれません。