ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2019年12月28日
葬儀屋はつらいよ ~大晦日編~
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
年の瀬になると、亡き父がよくしていた話を思い出します。
私がまだ小学生だった、家業的に葬儀を営んでいた頃の話です。
1年の仕事も終了した大晦日の晩、家族で紅白歌合戦を見ながらくつろいでいた時でした。
突然、家の電話が鳴りました。案の定、ご家族を亡くされた方からの葬儀のご依頼の連絡でした。
もともと葬儀屋は年中無休24時間体制。これも宿命です。
俺だって人間だ、大晦日ぐらいゆっくりさせてくれよ…。受話器を置き、ご依頼先へ伺う準備をしていた父の心に、思わずそんな気持ちが湧き上がったそうです。
そんな愚痴を抱えながら出かけようとする父の背中を、思いがけない声が追いかけました。「お父さん、今年最後の仕事だね。頑張ってね!」と。
それは、子どもだった私が掛けた言葉でした。(私自身は覚えていませんが。)
その声に見送られた父は、車を運転しながら、思わず愚痴った自分をとても恥じたそうです。
ご遺族のお宅に到着すると、喪主様が父の顔を見るなりおっしゃいました。「太田屋さん、大晦日に申し訳なかったね。本当は明日連絡しようかとも思ったのだけれど、元日に呼び出すのも悪いかと思って…」
そんな言葉をかけていただき、父はまたまた自分を恥じ、改めて深く深く反省したそうです。
どなたも死期を予期することはできませんので、葬祭業が常に稼働可能な体制を整えることは、今も昔も変わりません。弊社で葬祭に携わる社員も、つらさを感じることはあるでしょうが、ご遺族に寄り添う気持ちをいつも忘れずにいてくれています。
毎年、大晦日が近づき、街が年越しムードになる度に父の話を思い出し、この仕事の意義と誇りを改めて実感しています。