ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2022年7月1日
死別の悲嘆(グリーフ)は社会の課題
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
死別の悲嘆(グリーフ)が深刻なほど、ご遺族の生産性が低下し、医療費が高くなる傾向がみられる。以前この「ぶつだんやさん」コラムで、東北大学と京都大学の共同研究チームがご遺族からのアンケートを分析し、そのような調査結果を死生学の国際学術誌に発表したことをお伝えしました。その研究の中心メンバーである京都大学大学院「政策のための科学ユニット」カール・ベッカー特任教授のご講演を聞く機会に恵まれました。
まず驚いたのは、ベッカー教授の日本語が全く違和感のない流暢さだったことです。長年日本で教授職をなさっているので当然なのかもしれませんが。もうひとつの驚きは、ご講演の冒頭に「死別の悲嘆の打撃は、遺族と納税者たる市民に関わる」と言い切られたことでした。もちろん調査の更なる分析は必要で、今日は途中報告ではあるけれど、欧米の研究結果とも合わせると、「多死時代」を迎えた日本は、今後十数年のうちにほぼ全員が家族や友人との死別に直面し、その死別の悲嘆は社会に大きな影響を及ぼし、それは納税者全体の問題だとの認識が重要だとおっしゃいました。その視点に立てば「納得いく見送り」を担う葬儀社の役割は極めて重要で、改めて「葬儀はご遺族を守る社会貢献」なのだとの自覚を持ち、調査結果から見えてきたご遺族に最も大きな印象と影響を残す「優しい交流と専門家としてのアドバイスを通したコミュニケーション」に注力しなさいと激励されました。
弊社でもこの5月、死別の悲嘆(グリーフ)について、改めて臨床心理士のお話を基に社員全員が学び直す機会を設けました。お一人お一人で異なり、ましてや当事者ご本人でさえ気づくことの難しい死別の悲嘆(その影響)に寄り添うことは困難ですが、それでも「寄り添おうとする姿勢」を持ち続けること、そして「目の前のご遺族にとってベストな対応は何か」という正解のない問いに向き合い学び続けることは可能なはずです。ベッカー教授の「葬儀はご遺族を守る社会貢献」という言葉に、その姿勢を持ち続ける会社でありたいとの気持ちを新たにする機会をいただきました。