ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年10月22日

高野山麓のおすすめスポット

  • (株)佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

今年も紅葉の季節が近づいてきました。

私が住む和歌山県には、関西圏の寺院の中でも一早く紅葉が楽しめる高野山があります。

日本気象協会によると、2021年の高野山の紅葉は11月上旬~中旬が見頃とされています。紅葉の季節になると、高野山では夜間にライトアップされ、夕方~夜明けまで幻想的な景色が楽しめます。興味のある方はぜひ、紅葉状況を確認してからお出掛けになることおススメします。

昨年の今頃も高野山の紅葉についてお話させていただきましたが、今回はより楽しんでいただけるよう、立ち寄って頂きたいおすすめのスポットをご紹介していきます。

◎女人高野と呼ばれる『慈尊院(じそんいん)』

慈尊院は弘法大師によって、高野山参りの要所として創建されました。弘法大師の母、玉依御前(たまよりごぜん)の縁寺としても有名です。

玉依御前は高野山を開いた弘法大師に会うために、高齢ながらも香川県から、遠路はるばるやってきました。しかし、当時の高野山は女人禁制だったため、高野山麓の慈尊院に迎え入れられました。弘法大師は、母に会うために約20キロの険しい山道を、月に9度も下りてきたそうです。そのことから慈尊院の所在する地名は九度山と呼ばれ、九度山町という地名がつけられました。

玉依御前は弥勒菩薩を信仰されていて、弥勒菩薩の別名『慈尊』から『慈尊院』と呼ばれるようになりました。また、高野山が女人禁制だったものの、慈尊院には弘法大師の母がいたことから女人高野とも呼ばれ、山上に登れない女性からの信仰を集めていました。今では、子宝・安産・育児・授乳・健康など、女性ならではの祈願をすることができる寺院となりました。

◎弘法大師に高野山を授けた神の神社、丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)

慈尊院と高野山の中間に位置し、神仏融合を象徴する神社として世界文化遺産にも登録されているこの神社。穏やかな自然に囲まれ、澄んだ空気に包まれるこの場所には、弘法大師との縁深い逸話が残されています。

弘法大師が、真言密教を広げるための拠点の場を求め各地を旅してまわっていると、黒と白の2匹の犬を連れた猟師に出会います。猟師は弘法大師に「探している場所は、紀伊の山中にある」と告げました。そして連れていた2匹の犬たちを案内役につけてくれたのでした。ある山の麓まで来たとき、丹生都比売大神が姿を現しました。そして広大な土地を弘法大師に授けました。その広大な土地こそ高野山です。弘法大師が出会った猟師は、丹生都比売大神の御子である高野御子大神(たかのみこのおおかみ)でした。弘法大師は大変に感謝し、丹生都比売大神と高野御子大神を高野山の守護神として、高野山内の檀場伽藍(だんじょうがらん)に御社を建てお祀りしました。檀場伽藍は高野山に入った弘法大師が真っ先に整備を始めた大切な、真言密教根本道場の場です。ここからもわかるように、弘法大師は神々をとても大切に思い、神々を信仰する人たちも大切にしていたのです。これ以降、祖先を大切にし、自然に感謝する神道の精神が仏教にも取り入れられ、神仏の融合が始まりました。時を経て、それは今の日本人の心に根付く思想となっていったのです。現在の丹生都比売神社には白色の紀州犬すずひめ号と、黒色の大輝号、2頭のご神犬がおられます。そうやって今も弘法大師とのつながりを大切にされています。

 

ちなみに、 丹生都比売大神は天照大神の妹神です。ひめ神さまということで女性からの信仰も厚く、慈尊院と通ずるところがあります。共に高野山の玄関口として人気のスポットですが、このような歴史的な背景や、逸話などを知った上で参拝すると、色々な気付きが生まれて楽しいものです。高野山へ向かう途中にはぜひ立ち寄ってみて下さい。