ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年10月8日

心を軽くする『禅語』

  • (株)佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

『禅』とは何かと問われた時、『坐禅』を連想する方が多いと思います。しかし『禅』が意味するものは坐禅をすることだけではないのです。そもそも『禅』と言う言葉は『精神を統一して真理を追究する』という意味のサンスクリット語、『禅那(ぜんな)』を略した言葉です。つまり禅で重要なのは、真理を追究する精神統一であり、それは坐っていようが立っていようが、どんな姿で行っていようと『禅』なのです。

『修行=悟りをひらくためのもの』というイメージはありませんか?禅の場合は違います。その先の未来に悟りがあるわけではないのです、今修行しているその時のみ悟っている瞬間なのです。一生懸命に努力をすれば悟りに到達をして、その後は努力をしなくてよいなんてことはなく、努力をやめてしまった時に、悟りはなくなってしまう、そんな戒があります。私は昔から禅のこの考え方が好きでした。だからと言ってストイックなだけではなく、禅の言葉には心を前向きに軽くしてくれるようなものがたくさんあります。今回はそんな『禅語』をご紹介します。

 

日々是好日(にちにちこれこうじつ)

文字通りに解くと「毎日が良い日」という意味ですが、1日1日を大切に過ごすことで毎日が良い日だと思えるようになるという思いが込められた言葉です。また、『過去に拘ったりしがみついたり、未来へ期待を抱くだけでは良い日なんてこない。今の一瞬を大切に過ごすことで「毎日が良い日になる」という意味ともとれます。この言葉は2018年に上演された、樹木希林さん黒木華さん出演作の映画のタイトルにもなっています。女性の人生と茶道を通して、『日々是好日』の意味を体現した映画です。とても優しい雰囲気の映画です、気になる方はぜひご覧になってみて下さい。

 

行雲流水(こううんりゅうすい)

空を漂う雲、留まることなく流れる水。どこまでも自由で束縛されていない姿に、自由に生きて行こうという意味を重ねた言葉です。目の前に大きな岩が現れても、難なく流れていく水。水は変幻自在に形を変えて丸い器にも四角い器にも収まります。しかし固まるわけではなく、また直ぐに形を変えて流れ出るのです。高い所に登れば、雲は掴めそうなくらい近くに感じます。しかし実際には掴むことなんてできないほど遠く、何に邪魔されるでもなくただゆっくりと大空を漂っています。『行雲流水』は、そんな風に何にも束縛されず自由に生きなさいという言葉です。

 

無縄自縛(むじょうじばく)

自分を縛り付けているものは自分自身だという言葉です。世間で言う「当たり前」や「普通」に縛られ、身動きができなくなっていないか。実はただの思い込みで、思い込みにより人生の自由を奪ってはいないだろうか。そんな時には少し立ち止まり、心に余裕を持って周りを見回してみる。すると目の前の壁がいつの間にか消えてなくなることもあるかも知れません。

 

歳月不待人(さいげつひとまたず)

人生には限りがあります。過ぎ去った時間を取り戻すことはできません。何もしないでいることは、ただ時間を無駄にしてしまうことも。今しかできない事を全力でする。それこそが後悔しない人生を歩むコツなのです。日々是好日のように今の一瞬を大切にするという言葉です。

 

 

いくつか私の好きな禅語をご紹介させていただきました。

禅語は、曇った心を晴らしてくれ、前へ進む勇気をくれるような言葉です。ちょっと背中を押して欲しいような時に触れると、心も体も軽くなるのでおススメです。まだまだ素敵な禅語はたくさんあります。書籍などもたくさん出版されていますが、またこちらでもご紹介できたらなと思います。