ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2021年4月20日
神式のお葬式(神葬祭)の方がお祀りする神徒壇(祖霊舎)についてご紹介します。
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
神徒壇(しんとだん)とは
お葬式は仏教で、その後の供養はお仏壇で。全国的には仏教での葬送・供養が圧倒的多数を占めますが、地域によっては神道(しんとう)によるお葬式・神葬祭(しんそうさい)を執り行う地域もあり、その場合には故人様を「神徒壇(しんとだん)」にお祀りすることになります。神徒壇は他に「祖霊舎(それいしゃ)」や「御霊舎(みたまや)」「祭壇宮(さいだんみや)」などとも呼ばれます。
弊社のある長野県は、松本市の北側に位置する安曇野から大北地域にかけて、また伊那市の南側から飯田市にかけての飯伊地域で神道によるお葬式を行う地域が多くあり、その地域では故人様を神徒壇にお祀りします。信州長野県に神葬祭地域が比較的多いのは、明治初期の廃仏毀釈運動が強く推進された影響だとする方もいます。
神道は、日本古来の自然崇拝や祖霊崇拝に起源をもち、民族宗教的な要素が強く、開祖や教祖が居らず、教義や経典もありませんので、その祀り方や呼び名にも地域性が根強く残っている特徴があるように思います。他の神葬祭地域と異なる部分もあるかもしれませんが、ここからは長野県で行われている神徒壇でのお祀りについてご紹介していきます。
神徒壇の特徴
仏壇とは異なる神徒壇の特徴は、第1に中に「神棚(かみだな)」が組み込まれたお社形式になっていることです。仏壇では本尊を祀る「宮殿(くうでん)」となる部分が神棚式になっています。
この部分には「御霊代(みたましろ)」という故人様の御霊が宿る依代(よりしろ)をお祀りします。御霊代は「霊璽(れいじ)」と呼ばれることもあります。
御霊代は角形の柱状をしたものが一般的で、神職から霊号をつけてもらい書き入れます。氏名の後ろに「命(みこと)」の号をつけたものが霊号で「〇〇〇〇命」となります。また男性の場合には「大人(うし)」をつけて「〇〇〇〇大人命」と、女性の場合には「刀自(とじ)」をつけて「〇〇〇〇刀自命」とするケースもあります。柱の裏面にはご命日や亡くなられた年齢を記します。金襴の覆いを被せて神棚部分の扉の中に置きます。形は違いますが、仏壇の場合の位牌に相当すると思っていただくとわかりやすいかと思います。
写真でご覧いただいたように、白木造りも特徴のひとつです。素材としては、桧・栓・タモ・桐などが多く使用されています。最近は仏壇と同様に、現代風の家の雰囲気にマッチしやすいように変化していて、必ずしも白木造りでない神徒壇もありますが、やはり多くは白木造りです。
長野県内では、通常は神徒壇と神棚は両立して置かれています。「近い祖先はお仏壇、遠い祖先は神棚に」と言われることもあり、神徒壇には故人様をはじめとする近しいご先祖を、神棚には日本全体や地域のご先祖でもある神々をお祀りするという使い分けがなされています。
神徒壇の種類
神徒壇も仏壇と同じように、最近は様々な種類が増えてきました。従来の仏壇を白木造りにし、神棚を取り込んだような、大戸と障子の2枚扉と下台のついた神徒壇は最もポピュラーなタイプです。
最近では、1枚扉のすっきりしたタイプや、仏壇でいうモダン仏壇。現代仏壇のようなコンパクトなサイズで、よりシンプルなデザインの神徒壇も増えてきています。それでもちゃんと、御霊代を祀る神棚部分は組み込まれています。
白木造りばかりでなく、部屋の雰囲気にマッチしやすいダーク系の色彩の神徒壇もあり、神徒壇にも様々な変化が見られます。
また、台付きの神徒壇以外にも、家にある家具やタンスや棚の上に置くタイプの上置き型神徒壇の種類も豊富になってきています。
神徒壇での神具の祀り方
仏壇に仏具を飾って祀るように、神徒壇にも「神具(しんぐ)」を飾って祀ります。その神具の種類についてご紹介します。神具の飾り方は地域によって異なる部分もありますが、ここでは弊社の地域、信州長野県の事例でご紹介します。
・御神鏡(ごしんきょう)
神様の依代(よりしろ)となるご神体としての鏡です。お社(神棚部分)の前、または上段の中央に飾ります。
・真榊(まさかき)
古代から神前にお供えされる五色絹の幟(のぼり)の先端に榊(さかき)を立て、三種の神器を掛けたものです。向かって左側に剣、右側に鏡と勾玉(まがたま)を掛けたものを1対立てます。
・春日灯篭(かすがとうろう)
神社などで見受けられる切妻屋根をもった灯篭のことです。1対を飾り、中には灯りが点ります。
・榊立(さかきたて)
榊をお供えする器です。神事の際は生の榊をお供えしますが、日常的には造花の榊でもよいでしょう。
・徳利(とっくり)
お神酒を入れる器です。お神酒を入れたままにしておくとカビる恐れがありますので、毎朝お参りする際に取り換えたり、空の状態を保つ時間も必要です。1対でお供えします。
・水玉(みずたま)
お水を入れる器です。徳利と同様に、毎朝お参りする際に交換するのがよいでしょう。
・かわらけ
お洗米とお塩を1対で盛る器です。左右の位置関係は神職や地域によって異なる場合もありますので、直接お聞きになるのもよいかもしれません。信州長野県では、水玉と合わせて、向かって左側から「水・米・塩」の順序で横に並べることが多いです。
・遠山三宝(とおやまさんぽう)
神饌(しんせん=神様に供える飲食物)をお供えするものです。片方に海の幸、もう片方には山の幸をお供えします。遠山三宝に水玉とかわらけを乗せてお供えする場合もあります。その際には、手前左側に水玉を、中央奥にかわらけのお洗米を、手前右側にお塩のかわらけを置くのが通常の形とされます。
・かがり火立
お灯明を灯すためのローソク立です。お参りで火をつける際には、実際に見える灯部分よりも上方まで熱くなりますので十分にご注意ください。
上置き型の神徒壇などで、すべての神具を飾れない場合には、長野県の地域では春日灯篭や三宝を省き、御神鏡・真榊・榊立・徳利・水玉・かわらけ・かがり火立を飾る方法が一般的です。
地域によっては、通常の仏壇に仏具ではなく神具を飾って神徒壇とするケースもあるようです。特に小型の上置き型の場合には、仏壇で代用されることもあります。
地域や神職による考え方もあるでしょうが、日本の「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」の信仰が反映されているのが神徒壇の姿に表れているのかもしれません。
故人様やご先祖の御霊は、地域やその家の守護神となり子孫を守るとされます。お葬式を神葬祭でなさる地域がある仏壇店では、店舗で神徒壇を直接ご覧いただけます。是非この神徒壇でのお祀りを大切にしていただきたいと思います。