ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年4月11日

お仏壇の品質や価格について

  • (株)佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

ご来店下さるお客様の質問で特に多いのが『仏壇の品質や価格の違いについて』です。

最近では事前にインターネットなどで下調べされてから来店して下さるお客様が増えたのですが、調べるほどにわからなくなるとおっしゃられる方も多々いらっしゃいます。

 

今回は価格の幅が大きく、分かり辛いとされる仏壇についてお話します。

 

現在は設置場所などの多様化に伴い仏壇の種類は豊富ですが、形や素材が大きく違うわけではないので分かり辛い部分も多いのではないでしょうか。しかし、同じような形でも職人の違いや、造る工程によって価格は大きく変わります。初めて仏壇を迎えようとしている方には、その違いを見分けることは難しいですよね。

下調べをしてきた方が、よくわからないなと思ってしまう要因の一つに、『どう見ても同じデザインの商品なのに、店ごとで値段や商品名が違う』というお話がありました。実際価格については、日用品や家電などもサービス内容によって店舗ごとに価格が変わるように、仏壇店も店ごとに価格は違います。

商品名が違う場合に考えられるのは、細かい部分の造りを変更して、その店のオリジナル商品として販売している場合があります。この場合にはお店のこだわりによって変更していて造りに差はほとんどないので、品質表示と寸法を良く確認した上でお客様の好みで選んでいただいて問題はありません。

注意が必要な場合は、造りや素材が違うものをデザインだけ模して造り、同等の価格で販売している場合。また、商品名と価格が大幅に違う場合には、適正価格より高額で販売している場合がありますので、十分にご注意ください。

 

 

では、仏壇の価格の差はどこで生まれるのか。

よく『木の素材や装飾の豪華さ、仏壇の大きさで値段って変わるのですか?』とご質問いただくことがありますが、実際はこれらのことでそこまで大きく値段は変わりません。

まずは素材ですが、もちろん木目をプリントしたものと天然木材を使用したものでは価格は違いますが、例えば黒檀と紫檀、欅やウォールナットなどの素材の違いで価格が大きく変わるかと言うと、あくまでも素材の価格の違いだけなので、そんなことはありません。装飾の豪華さですが、最近では機械で彫刻することもできるので、そのような場合にも価格に大きな違いはありません。次に大きさですが、大きくなれば木材も多く使うようになりますが、造る工程は一緒なので、木材の量だけでそこまで価格は変わりません。

では価格が変わる一番の理由は?というと『職人がどれだけ時間をかけて丁寧に造り上げたか』ということです。と言っても分かり辛いですよね。

丁寧に造るということには、まず木材は乾燥が重要です。そして乾燥する時間は全工程で最も時間がかかります。機械乾燥のみで仕上げればある程度時間は短縮されます。最も丁寧な乾燥方法は、何年もかけて自然乾燥をし、灰汁を抜き、さらに機械乾燥をすることです。そうすることにより木が反りにくくなり強い仏壇となるのです。また、一流の職人となれば機械乾燥した際に、水分量のコントロールもします。そうすることによって四季のある日本の湿度や乾燥に耐えられる、より強い木材となり、末永くお祀りいただける仏壇ができあがるのです。ですが自然乾燥には時間と場所と適切な管理が必要となり、一つの仏壇を造り上げるまでには何年もかかります。こういった時間と手間暇が価格に反映されるのです。

 

 

また原産国の違いも、よくお客様からご質問いただきます。仏壇の原産国で多いのは、中国とベトナムです。しかし今は原産国が違うだけで大きな価格の違いにはならないのです。ただそれは『同じような工程で造ったとしたら』です。

海外品の安い大きな要因に、人件費が違うからだと思っている方も多いと思いますが、人件費は年々上がっています。ベトナムに工場を持つ仏壇メーカーさんに話を聞いた時にも、仏壇のように複雑かつ繊細な造りで、手間暇をかけて製作する場合には、人件費は商品価格に対し、そんなに変わらないとおっしゃっていました。

ではなぜ海外品だと価格が安いものが多いのかと言うと、仏壇を造る工程が腕のいい職人の半分以下で造られているからです。

例えば木材の研磨作業です。腕のいい職人が7段階かけて何種類ものやすりで研磨を仕上げるところ、3~4段階の研磨で仕上げられます。研磨の作業は、増えれば増える程きめ細やかな仕上がりになります。しかし時間がかかる作業です。

他にも木材の乾燥作業や塗装作業にもたくさんの工程があり、それを少なくすると時間の短縮になり、造れる仏壇の壇数が増えるため、価格にも大きく関わってきます。

お仏壇は現在8割近くが海外品となっていますが、一概に国産だから良い商品で、海外だから悪い商品というわけではありません。仏壇が作られるプロセスにより価格が決められているのです。

 

お仏壇選びにはお客様が、どのようにお祀りしたいかが重要です。どのくらいの年数お祀りしたいかによっても選び方は変わってくると思います。以上の事を踏まえた上で、総合的に考え、ご自身に合ったお仏壇を選んでいただけたらと思います。

 

最後に、今まで仏壇はお店の知名度やブランド力で販売されてきました。しかし、より良いもの、お客様の要望に沿う商品を選んで頂くためには、お客様に分かりやすい価格設定と品質表示が必要だと思います。値引きについてのご質問も頂きます。大きな値引きをして貰うと嬉しいものですが、それが最初から適正価格の表示をしているのか疑問を抱かれるお客様もいらっしゃいます。店によっての価格設定の違いや、品質表示がされているかの有無も含めて、お客様の仏壇選びが分かり辛い要因になっているのは確かです。最近ではお客様の声もあって、品質表示の提示も義務化され、わかりやすい価格の表示がされるようになりました。しかし、品質表示だけでは造る工程や職人の顔が見えません。そこで私たち仏壇店は、それをわかりやすく皆様にどうしたら伝えられるのかを考え、皆さんが安心してお仏壇に手を合わせられるように日々努力してまいります。

お仏壇について簡単な説明ではありましたが、少しでもお客様のお仏壇選びの参考にして頂ければ幸いです。

 

お仏壇のことで分からないこと、気になることがあれば仏壇店にお問い合わせ下さい!