ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2021年4月10日
避難区域の桜
- ほこだて仏光堂
- 早川 登
福島県の富岡町には、『夜の森の桜』と呼ばれる桜の名所があります。
道路の沿道両側にずっと並んだ桜は、明治時代の植樹から始まり、樹齢80年以上の木も多く、訪れる人々を魅了します。
しかし東日本大震災・原発事故後、原発のすぐ近くであったその地域には、全町民に避難指示が出され、長く『帰還困難区域』として立入が制限されておりました。
今でも、帰還困難区域で立ち入れない場所があり、町のあちこちにはバリケードで塞がれたところが見受けられます。
今年の春、久しぶりにこの夜の森の桜を訪れました。
新型コロナウイルスの予防対策のため、出店は自粛となり、遊歩道となった入口にはアルコール除菌スプレーが置かれ、みな桜を見る前に除菌をしておりました。
『桜のトンネル』と呼ばれた桜の名所は、まばらですが桜を見る人々が訪れ、風も強く、落花盛んでしたがそれが逆に、桜の絨毯を作って美しい光景を作り出していました。
かつては2.2キロにわたり、約420本の桜を観に、10万人が訪れていた桜の名所。
現在では800mに規制され、半分以上の桜が立入禁止の場所となっている。
コロナが終息しても、この規制が解かれるのはいつになるのだろうか?
そんな陰鬱な思いをかき消すかのように、雅楽の音が流れてきた。
桜のトンネルの下で、龍笛(りゅうてき)を吹いている一人の女性。
ストリートパフォーマンスだろうか?
楽曲は松任谷由実の「春よ来い」
アレンジされたその音色に、桜を見ていた人たちも聴き入っていた。
サビに入ると、強い花吹雪が舞い、なんとも言えない幻想的な光景を醸し出しておりました。
曲が終わると、沿道から拍手がおき、その女性は少し恥ずかしそうに頭を下げて、その場所を去っていきました。
わずかな時間でしたが、忘れられないいい思い出が出来きました。
また、大勢の人が、復活した桜のトンネルを観に来る日が来たら良いなと思った一日でした。