ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年4月2日

墓所に灯篭を置くのはなぜ

  • 株式会社ぶつだんのもり
  • もくりんくん
墓前灯篭

よく、墓地のお墓の前辺りに石の灯篭を置いているのを見かけませんか。

お墓の前に置く灯篭を特に墓前灯篭と呼ぶのですが、この灯篭にはどんな意味があるのでしょうか。

 

三大供養

仏教では三大供養とされる香・華・灯があります。仏壇においてもこの香・華・灯は具足という仏具で行われる特に重要な供養とされています。

お墓でもこの三大供養はもちろん重要な供養です。日本の仏教のお墓であれば、花立てと香炉はまずあるかと思いますが、灯篭に関しては墓所の敷地の広さや予算の都合上、省略されることがあります。ですが、やはり火を灯すことは大事な供養のひとつですので、できることなら灯供養も行いたいものです。敷地や予算の都合でしたら、灯篭の代わりにローソク立てを置くという手段もありますので、検討材料のひとつとしてみてはいかがでしょうか。

 

灯火とは

仏教における火の灯りは、邪気を払うことと、迷いを無くして導くという意味があります。

灯篭流しや盆提灯、迎え火や送り火、お焚き上げ等、仏教では様々な火を使う行事がありますが、いずれも邪気を払い、迷いを無くして導くという意味があるかと思います。

 

墓前灯篭の各部の名称

墓前灯篭 部材名称墓前灯篭の部材の構成を上から紹介します。

宝珠(ほうじゅ)

一番上にある玉ねぎのような形の部材です。宝珠とは仏像や掛軸でよく仏様が持っている玉です。橋の欄干の柱や武道館の屋根の上等の仏教以外で使われる場合は擬宝珠(ぎぼし)と呼ばれます。

笠(かさ)

屋根となる部材です。火の灯りを雨等から防ぐパーツです。

火袋(ひぶくろ)

メインとなる火を灯す所です。昔の灯篭は穴をくり抜いただけのようなものもありますが、最近のものは正面が格子になっているものがほとんどです。少々の風ならば防ぐことができます。

受けもしくは中台

火袋を上に乗せる部材です。地輪と対となった形をしていることが多いです。

柱もしくは竿(さお)

受けと地輪の間に挟んで高さを上げるための部材です。何かの台の上に置くことが前提の上置型の灯篭では省略されます。また、墓前灯篭ではない、高さの低い雪見灯篭などでも省略されています。

地輪(じりん)もしくは基礎

最も下部にある灯篭を安定させるための部材です。

 

墓前灯篭は火を灯さなくてもいい?

墓前灯篭実は墓前灯篭は実際に火を灯さなくてもいいと言われています。

その秘密は墓前灯篭の火袋に彫刻されている太陽と月にあります。火を灯していない時にでも、日中は太陽、夜間は月の光が明るく照らしているという意味があり、墓前灯篭は据え付けているだけで灯供養ができるとされているのです。

もちろん実際に火を灯してもよい構造にはなっていますので、手を合わせる時だけでも火を灯すのもいいかと思います。火事の危険がありますので、墓所を離れる際には完全に消化しましょう。

 

墓前灯篭の据え付け方

墓前灯篭を墓所に据え付ける際は、通常は一対で設置します。どうしても一対で置けない場合は右側に据え付けるようにします。墓前という名前の通り、通常お墓より前に据え付けます。お墓のすぐ前の左右に据え付ける場合や、敷地の入口の左右に据え付ける場合があります。

 

墓前灯篭の太陽と月の位置

よく意見が分かれる問題で、火袋に彫刻する太陽と月の向きはどれが正しいのかということがあります。

日光菩薩・月光菩薩薬師如来の脇侍として祀られる日光菩薩と月光菩薩の位置だという説が、最も納得のいく考えかなと思っています。

そして、なぜこんなに太陽が右に向いたり左に向いたりといろいろな灯篭があるのかとか考えましたら、こちらも納得のいく考えがありました。それは、正面から見たら上下対象である火袋を間違えて上下逆に据え付けたという説です。つまり、日光菩薩・月光菩薩の位置に従って、向かって右側に太陽、向かって左側に三日月の火袋を作成しましたが、これを上下逆に据え付けると、向かって左側に太陽、そして向かって右側には月がくるといった感じです。

どうでしょう。有り得そうな話ではないでしょうか。

もっとも、本当のところはどれが正解なのかは分かりませんので、どんな向きであっても間違いではないのです。

 

墓前灯篭の形

墓前灯篭墓前灯篭の形には大きく分けて丸型と四角型があります。灯篭には六角型や八角型のものもありますが、現在の墓前灯篭ではまず見かけません。

丸型か四角型かどっちにすればいいのかは特に気にせずにのデザインの好みで選べばよいかと思います。

 

墓前灯篭以外の石灯籠

お墓の前に据え付ける墓前灯篭以外にも石製の灯篭がいくつかあります。代表的なものを紹介します。

春日灯篭

春日灯篭春日灯篭は背が高く、六角形の火袋と丸くて長い柱の灯篭です。かつて春日大社で使用されていたことからこのような名前が付いています。現在ではお寺や日本庭園などに据え付けられていたりします。春日大社には、神様が白い鹿をたくさん引き連れて来られたという言い伝えがあることから、春日灯篭の火袋の六角の一面には鹿が彫刻されています。

雪見灯篭

雪見灯篭雪見灯篭は背が低い灯篭で、柱の部分が無いのが特徴です。大きな笠で、形は六角形と丸があります。一番下の地輪に当たる部分は、3本もしくは4本の足になっています。日本庭園などで水面を照らす用途で設置されたりする灯篭です。

織部灯篭

織部灯篭織部灯篭は、柱の部分の上部が膨らんでいる少し特徴的な形状の灯篭です。この形は、かつてキリシタンであることを隠すためにキリスト教の十字架をデフォルメしたものだと言われます。そして、柱部分にはよく分からない記号のようなものが彫刻されています。これは90°回転させるとLhqというアルファベットに見え、諸説ありますが、キリスト教の集会であったりとか父なる神という意味だとかキリスト教に関連する意味があると言われています。

 

墓前灯篭以外の石灯籠

供養のためにはできるなら設置したい灯篭。墓石・石材店の加工技術も上がっていますので、お好みで小さいサイズの灯篭も作成可能です。

火を灯さなくても火を灯したのと同様の意味がありますので、火袋部分にローソク等を入れることを考えなければかなり小さなサイズでも大丈夫です。

また、最近ではデザインも色々なものが出てきていて、洋風のお墓に合うようなものもありますし、オーダーメイドでお好みのデザインで作成ができる所もありますので、一度、墓石・石材店にご相談されてみてはいかがでしょうか。