ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年3月14日

お仏壇に供えるお花について

  • 株式会社佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

お仏壇に供えるものとして『五供(ごくう)』という言葉があります。 五供(ごくう)とは『香』『灯明』『花』『ご飯』『水』の5種類です。この5種類が基本のお供え物として大切にされてきました。

今回はその中の『花』についてのお話です。

 

仏壇に『花』を供える、そのはじまりにはお釈迦様のある逸話がもとになっています。

 

【花を供える、はじまりのお話】

お釈迦様の前世、儒童梵士(じゅどうぼんし)と呼ばれ修行していた頃、燃灯仏(ねんとうぶつ)という仏が都に現れることを知りました。ぜひ花を捧げたいと思い立ちましたが、町中の花は既に国王に買い占められていました。その時です、水瓶を脇に抱え7本の青蓮華(しょうれんげ)を持つゴーピーという少女に出会いました。彼女も花が必要で、なかなか譲ってはくれませんでしたが、彼は懇願の末に有り金をすべてはたき、ようやく5本の青蓮華を手にしたのです。そうして燃灯仏へ花を捧げることができました。

国王や、その他の人々が燃灯仏に花びらを撒きましたが、儒童梵士が撒いたあの5本の青蓮華のみが空中にとどまり、燃灯仏の頭光を飾りました。更に彼は、燃灯仏の足が泥水で汚れないように、着ていた衣を地面に広げ、その上に自らの髪を解き敷いて平伏しました。すると燃灯仏は儒童梵士に、『来世には釈迦という仏となるであろう』と予言を授けました。彼は喜びのあまりとびあがりました。

 

これが仏に花をお供えした始まりだとされています。

このお話は『燃灯仏授記(ねんとうぶつじゅき)』という仏伝です。『授記』とは仏が修行者に対して将来必ず仏となることを予言し保証を与えることをいいます。

 

 

【なぜ花を供えるのか】

花は厳しい大自然の中を耐え抜き、花を咲かせます。咲いた後も雨風に負けることなく美しく咲き続けます。その姿は、厳しい修行に耐え忍ぶ仏教の教えと重なり、自らも精進する事を誓う証として花を供えると言われています。

そして、仏様やご先祖様に美しいものを供え、手を合わせることは、供える者の心を穏やかにすると言われています。

また、花は故人に対して“思う気持ち”を表すこともできます。故人の好きだった花を供えたり、花言葉で思いを伝えることで対話しているような気持になります。

その他にも色々な理由がありますが、花を供えるということには『気持ちを伝える』『心を通わす』という大切な思いが根本にあるように思います。

 

【どんな花を供えれば良いのか】

基本的には決まりはありませんが、好ましくない花もあります。

注意する点を確認しておくと良いでしょう。

 

トゲのある花、毒のある花…

薔薇などのトゲのある花は、触ったものを傷つけてしまうかも知れない危険な花です。また毒のある花も危険な花です。仏や故人に危険な花を供えることは好ましくありません。薔薇が好きな方は多いので、故人に供えてあげたい場合はトゲを取ってから供えましょう。最近では店頭で販売している薔薇もすでにトゲが取られている場合があるので確認してみてください。

 

ツルのある花…ツルのある花は絡みついて成仏できないイメージを連想させます。

 

ドライフラワー…ドライフラワーも、死をイメージさせることもあるので避けられています。

 

その他にも、香りの強い花には虫が寄りやすく、お仏壇には好ましくないとされています。花粉の多い花は仏壇を汚して取れないことがあるので避けられます。

 

以上のようなお花をさけていただくと、心配なくお供えして頂けるかと思います。わからない時にはお供え用だとお花屋さんに伝えれば上手く組んでいただけると思います。

 

しかし、あまり難しく考えずに『大切に思っている』という気持ちが伝われば故人も仏様も喜んで頂けると思いますので、楽しんで選んで頂けたらと思います。

 

 

【造花はやっぱりダメなのか】

仏教には「生あるものは必ず死を迎える」という考えがあります。そのため、蕾から花を咲かせ枯れていく生花を、生あるものと重ね供えています。できる限り生花で供えて頂くと良いですが、昨今の生活事情ではなかなか難しい場合もあります。そんな時には造花を上手く利用して頂くと良いかと思います。またプリザーブドフラワーは新鮮な生花を特殊な保存液につけ脱色し、美しい形をそのままに新たに着色していますので、みずみずしく色鮮やかなお花が長持ちします。

暑い季節は花が長持ちしないため、利用して頂くのも良いかと思います。

しかし、大切な命日などの法事には生花を供えるようにして下さい。故人の誕生日や記念日、ふとお花屋さんが目に入ったときにも生花を供えれば喜んでもらえそうですね。

 

【花を長持ちさせる方法】

切り花を長持ちさせるためにはまず、花器の中の水をキレイに保つことが重要です。細い茎の管から花全体の水を吸い上げないといけない切り花は、水が汚れていれば茎が腐り、水を吸い上げられなくなったり、茎の管が詰まり吸い上げられなくなるそうです。これを防ぐためには小まめに水を取り替えることが大切です。1日に1回程度水を取り替え、茎の断面を少し切り、水を吸い上げやすくすると花持ちが良くなります。

とは言っても忙しい時には難しいと思います。そんな時には切り花専用の延命剤を使って頂くと良いです。延命剤には水をキレイに保つ効果と、花に栄養を与える効果があります。お花屋さんやホームセンター、仏壇店などで購入できるので利用してみてはいかがでしょうか。

 

 

【お花の定期宅配便】

最近ではリビングなどにも置ける小型なお仏壇も増え、仏具もコンパクトなものが増えています。そうすると仏花として組んで売られている花が入らない事もあり、どう供えれば良いですか?とご質問を受けることが多くなってきました。一番簡単な方法は、組んだ仏花を適量に減らし、長さを調節して供えて頂くことです。しかしリビングなどに飾る場合はおしゃれに季節の花を飾りたいという方もいらっしゃいます。

そんな時に便利なサービスが、お花の定期宅配便です。

インターネットで、届く頻度やお花の量などを選んで申し込むサービスです。季節のお花がプロのアレンジで数種類送られて来ます。毎回違った組み合わせの花が新鮮ですし、普段目にしないような種類の花や葉が送られてくるので楽しいです。小さいものは、専用のお花が痛まないボックスでポストに投函してくれるので、家にいる時間が少ない方でも安心です。根元にも水分不足にならないように工夫してあり、傷んでいた場合などは保証があるところもあるので、ご自分にあったお店を探してみて下さい。

 

 

 

仏壇に供える花で、一番大切なのはやはり『心』です。先祖や故人を敬う気持ちでお供えすればきっと喜んで貰えるはず。供える側の心も晴れやかになりますし、お部屋も華やかになります。色々な選択肢があるので、ぜひお花のあるお仏壇を。