ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年2月28日

お位牌について

  • 株式会社佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

身近な方が亡くなると、位牌を用意しなければなりません。そのことは、何となく皆さんご存じだと思います。

でも、『位牌っていったい何?』『絶対にいるの?』『どうやって選んで作るの?』もし誰かに聞かれたとしても、よくわからないことが多いですよね。今回は、いざという時のために知っておきたいお位牌の“あれこれ”をまとめてみました。

 

・位牌はいつからあるものなのか

位牌の由来には諸説ありますが、一般には中国の儒教からきたものだと言われています。儒教では死者の埋葬後、『依り代(よりしろ)』『木簡(もっかん)』などと言われる木の板に、故人の官位や名前を記し、供養をしていました。

儒教に影響された禅宗の僧侶によって日本に持ち込まれ、依り代が仏教の塔婆と合わさり『位牌』となったとされています。

他にも日本の神道で用いられる御霊代(みたましろ)からきているという説もありますが、御霊代も儒教に影響を受け、日本に広まったとも言われています。形も用途もよく似ていますが、御霊代は白木のシンプルな造りで、位牌は漆塗に金の装飾がされているものが一般的でした。

位牌は鎌倉幕府の歴史書『北条九代記』に登場し、今から約800年前からお祀りされてきました。その後、室町時代の頃から武士を中心に広まり、江戸時代に一般庶民へと広がっていきました。

 

・そもそも位牌の意味とは

家にお仏壇がない場合、そもそも位牌は何のために祀らなければならないのかわからないという方もいらっしゃると思います。位牌とは故人の魂の依り代です。お墓は故人が埋葬される大切な場所ですが、その魂はお仏壇の中の『位牌』に入っているのです。※宗派によって教えの違いがあります。

 

・位牌は必ず要るものなのか

仏式(仏教)で供養されお祀りしていく場合には位牌は必要です。ですが、宗派が浄土真宗の場合は教えにより位牌は必要ありません。地域にもよりますが過去帳に記してお祀りすることが多く、その場合は過去帳をご自分で用意し、ご寺院様に書いて頂きます。その時には一度ご寺院様へご確認下さい。

その他、日本での主な宗派である『天台宗』『真言宗』『浄土宗』『臨済宗』『曹洞宗』『日蓮宗』の檀家さんであれば位牌は必要になり、四十九日の法要までにご用意して頂きます。四十九日の法要で、祭壇でお祀りしていた白木のお位牌からご用意された位牌へと魂を移して頂きます。

仏式でお祀りしない場合、位牌は必らず要るものではありませんが、お気持ちでお祀りする際の心のより処であり手を合わせる象徴として作られる方もいらっしゃいます。

 

・位牌注文の流れ

ご寺院様より戒名を頂く

仏壇店に位牌を作りに行く

※仕上がりまでに数日かかります。

位牌の種類を決めたり、文字の確認に時間がかかる場合があるので、2週間程度余裕をみて来店すると良いでしょう。

四十九日の法要で白木の位牌から魂を入れ替えて頂く

 

・位牌の選び方

『新しく位牌を作るときは何を基準に選べば良いのか』『作るためのルールがあるのか』いまいちわからない方は多いと思います。位牌は滅多に作るものではないので当たり前のことです。

まず大きさですが、現在お祀りされているお位牌がある場合はそちらを基準に決めていきます。続き柄(故人との関係)によって大きさが決まり、もし親子であれば子どもが親よりも大きくならないよう気を付けます。同じサイズであれば大丈夫です。先祖位牌(○○家先祖代々之霊位と書かれている位牌)がある場合には同等にはせず、必ず下まわるサイズでお作り下さい。お位牌が数本あれば先祖位牌が一番大きくなるようにしてください。

お仏壇もなく位牌もない場合には、お位牌をどうお祀りするか、お仏壇の大きさはどんな大きさにするのかを決められ、その置き場所に合ったサイズの位牌でお作り下さい。

形やデザインですが、宗派によって決められているわけではありません。現在お祀りしているお位牌と揃えて頂いても綺麗ですし、同じもので作らなくても大丈夫です。時代により新しい形も増え、今ではデザインもカラーも豊富なので、お部屋の雰囲気に合ったものや、故人の雰囲気に合うもので選んで頂けます。

 

・位牌の種類や価格がわかりづらい

価格は数千円から数十万まで幅広くあります。
同じ名前で同じ形に見えるのに、価格が全然違う場合がありますが、それは職人と材料、造る工程が違うからです。伝統的な位牌にはだいたいの形が決まっており、名前がついています。職人や作る材料や工程が違っていても形が一緒であれば同じ名前で表記し、販売します。また最近では海外製の位牌も多く流通しており、そちらも同じ名前で販売されていることがあります。違いが分かりづらいので購入時には詳細を確認して頂くことをおすすめします。

お位牌は決して安いものではないですが、何十年もの間お祀りして頂く大切なものです。納得して購入して頂けるものを選んでください。

 

・位牌に書かれている文字とその書き方は

お位牌には故人の戒名、亡くなった日にち、生前の名前、亡くなった歳などが記されます。

位牌の表側中央に書かれる『戒名』とは、仏門に入り授戒したものに与えられる名です。授戒とは、お釈迦様の教え(規律)を守って仏弟子として生活していきますという誓いです。

戒名は2文字で表されますが、位牌に書かれている文字はもっと長いです。戒名以外の文字には『位(くらい)』や『性別』などが表されています。

現代では仏教徒でなくても位牌を作られる方が増えています。その場合は位牌の表面の中央には氏名を、裏面には亡くなられた日付とお歳を記す場合が多いです。

 

位牌の文字入れは『彫文字』と『書き文字』2種類あります。地域によってはどちらかが多い場合もあり、関西では彫文字が多いです。
『彫文字』は字がはっきりとし消える心配がない代わりに、もし誤って記しても消すことができません。『書き文字』はやわらかい印象の文字になりますが、掃除の仕方によっては文字が消える場合があります。地域性もありますが、どちらか選べる場合にはそういったことを考慮して選びましょう。

戒名の文字の色は一般的に『金色』が多いです。金は邪悪なものを寄せ付けないといわれており、伝統的な塗位牌は戒名を記す札板の縁を金で囲んで結界を張っています。

現在ではデザインも豊富になり、金色の使用されていない位牌も増えています。それにより文字の色も白や青、茶など種類も増えています。

 

・お位牌がいっぱい…どうしたらいいの

『お仏壇の中がお位牌でいっぱいになってしまってこれ以上増やせない』

『引っ越しでお仏壇を買い替えたいが、今までお祀りしていた位牌が多すぎて納められない』などのお悩みを最近よくお伺いします。この他にも位牌が大きすぎて、仏壇を買い替えたいがぴったり入るお仏壇がないなどのお悩みもあり、大切なお位牌だからこそ悩まれる方も多いのだと思います。

そんな時に一度見て頂きたいお位牌が『繰り出し位牌』と呼ばれるお位牌です(トップ画像の向かって右端)。種類や大きさによって異なりますが、厚みのある本体の中には札板が5枚~10枚くらいまで収めることができます。札板は白木のものや塗板のものがあり、それぞれ1枚につき1名分記すことができ、まとめてお祀りすることができます。

白木の札はご寺院様に直接書いて頂きます。塗板は購入の店舗に彫刻してもらいます。

最近ではデザインも豊富になって、家具調のお仏壇に合うシンプルなものやモダンなものも多くあります。また、そんなにたくさんは無いという場合には、1本の位牌に夫婦2名分記す『夫婦位牌』という選択肢もあります。

お悩みの方は、ぜひ一度ご寺院や仏壇店にご相談下さい。

 

・位牌に魂を入れるのは

仏教でお祀り供養される場合には、四十九日法要または七七日(なのなのか)法要までに位牌を用意します。故人は四十九日の中陰を経ることで仏様になると考えられています。中陰とは亡くなってから次の世へ生まれ変わるまでの四十九日間を指し、その間は7日間ごとに生前の罪を裁かれ、生まれ変わる世が決められます。

葬儀で頂いた白木の位牌は、あくまで仮の位牌で、四十九日の間のみ祀られます。そして、四十九日法要で白木の仮位牌から本位牌へと魂を移し替えて頂きます。その後、白木位牌はご寺院様が持ち帰って下さいます。

 

・位牌を処分するには

ご事情により位牌を処分しなければならない場合には、ご寺院様にお魂を抜いて頂きます。お魂抜きをして頂いたお位牌は、ご寺院様がお持ち帰りになられることが多いですが、手元に残った場合には、仏壇店へご相談下さい。

 

お位牌について色々お話させて頂きましたが、お位牌が『難しいもの』というわけではありません。それだけ『大切なもの』なのです。たくさんの種類が増えたことによって、選択肢も増えました。今まで以上に思いに合った位牌を選んで頂くこともできるようになりました。

末永くお祀りして頂くお位牌、故人の魂の宿る大切な場所です。ぜひこれだというものを見つけてください。