ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2021年2月8日
終活をはじめる時に知っておきたい最近のお葬式事情
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
「終活」という言葉は私たちの暮らしに完全に定着しましたね。以前は「シュウカツ」と言えば「就活(就職活動)」を思い描く人の方が多かったと思いますが、昨今では「終活」を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
その「終活」ですが、そろそろ考えた方がいいかな、とお感じの方もいらっしゃるかと思います。ただ、そう考えても一体何から始めたらよいやら…と思い立ったはよいけれど、立ち止まったままの方も多いのではないでしょうか。
そんな方々のために、お葬式やお仏壇・お墓の仕事を長年続けてきた立場から、お困りの皆様にアドバイスができればと思います。
一口に「終活」といっても、生前の財産管理や整理から亡くなった際のお葬式、その後の相続をはじめとする様々な手続き、そして法要・法事、お仏壇やお墓等での供養に至るまで、実に多くの事柄が含まれ、また幅広く多くの分野に関係してきます。その中から、今回は「最近のお葬式事情」に関して「知っておきたいこと」をお伝えしたいと思います。
ご存知のように最近はお葬式も多様化し、選択肢が増えています。それと同時に、以前のように地域ごとの方法が習慣的に決められていた時代には不要だった「どんなお葬式にすればよいか」というお悩みも増えています。選択の自由度が増した分だけ、考えて決める必要が生じているのですね。まずは多様化するお葬式にはどんな形があるのかを知っていただくことは、終活を具体的に考えはじめるキッカケになるかもしれません。
お葬式の多様化には、大きく4つの側面があります。
1.お葬式の場所(会場)の多様化
2.お葬式の参列人数(規模)の多様化
3.お葬式の内容や形態の多様化
4.お葬式の窓口の多様化
これらお葬式の4つの多様化の側面を知っていただき、ご事情に応じた選択にお役立ていただきたいと思います。
※ここでの「お葬式」という言葉は「通夜」「火葬」「葬儀・告別式」をすべて含めた全体を表現しています。
<お葬式の場所(会場)の多様化>
地域の特性や風習により、主にどのような場所(会場)でお葬式を執り行うのかに少々違いはありますが、凡そ以下の場所がお葬式をする場所になります。
・自宅
・寺院(菩提寺)
・葬祭会館(ホール)
・公民館(地域公共施設)
通夜は自宅で、葬儀告別式は菩提寺で。通夜も葬儀告別式も葬祭会館で。このように、これらの場所を「通夜」と「葬儀・告別式」で組み合わせることで、より多くの選択肢が生じることになります。
大切な方が残念ながらご逝去された際には、まず最初に亡き方をお連れする場所を決めていただきます。その場所は、多くの場合は通夜会場と連動します。(もちろん、一旦お連れする場所と通夜会場が別になるケースもありますが。)ですから、通夜をどこで行うのかというご希望を最優先にお考えいただくことになります。
私の地域の事例では、通夜を執り行うのは自宅または葬祭会館のどちらかが大多数です。ただし最近は、通夜のできる施設を整えた寺院もありますので、寺院での通夜も選択肢に挙げられます。亡き方が病院に長く入院されていたり、介護施設で長年過ごされていた場合には、「もう一度家に帰してあげたい」という気持ちから、自宅での通夜を希望される方も多くいらっしゃいます。また家庭の事情で、自宅にお連れし通夜を行うのが難しいと、直接葬祭会館にお連れして通夜をなさる方もいらっしゃいます。その場合には、弊社ではご希望があれば、出棺後に自宅を回って火葬場に向かうという形を取ることもあります。通夜をどこで執り行うのかは、お亡くなりになられて最初に考え決めていただく事柄です。通常の葬祭会館では、一定期間亡き方のご遺体をお預かりできる施設を整えていますので、すぐに決められない場合には、一旦葬祭会館にお連れして、その間にお考えいただくケースもあります。
亡き方をお連れした後に、その後の火葬や葬儀・告別式を葬儀社と打ち合わせしながら決めていきます。菩提寺のある方は寺院での葬儀・告別式は重要な選択肢であり、寺院によっては「檀家の方は寺院で葬儀を執り行う」ことが檀家規約で取り決められている場合もあります。そうでない方は、葬祭会館や地域の公民館も選択肢となります。車社会を前提とした利便性や、遠隔地からの弔問客を考慮すると葬祭会館が最も好都合かもしれません。しかし、隣近所や地域の方々、特に高齢の方々にも是非お別れをして欲しいと希望される場合には、自宅や地域の公民館も重要な選択肢です。ただ、以前は葬儀に対応ができたけれど、最近は祭壇等も片付けてしまい対応ができないという公民館もあるかもしれませんので、きちんと確認する必要があるでしょう。
このように、現在は全国どの地域でも、多かれ少なかれ通夜を、葬儀・告別式をどこで執り行うのか、どの組み合わせにするのかには多様な選択肢があります。お気持ちやご事情に合わせてお考えください。
<お葬式の参列人数(規模)の多様化>
これは、どの範囲の方々にお別れをしてもらいたいと考えるのか、による選択となります。以前は、隣近所(隣組)にお手伝いも含めてお別れに来てもらう、区長に弔辞をいただく、会社の取引先にはお知らせする等、地域ごとに習慣的に判断する範囲がありました。また私の地域では、区報や地域紙に訃報をほぼすべて掲載し、それを知ったご縁のある多くの方々が弔問にお越しになるのが当たり前でした。今では「一般葬」と呼ばれるその形は、お焼香に来られる会葬者が数十人から数百人、葬儀・告別式に参列し、精進落としの会食に列席される方が30~100名規模でした。しかし昨今は、喪主様をはじめとする遺族の方々のお考えで自由に決めていただけます。
家族だけで静かに送りたい、親戚等の近しい身内の方々も含めたい、長年故人と親しかった友人には声をかけたい、ある程度広く生前ご縁のあった、お世話になった方々にお別れをしてもらいたい等、故人を送る時には様々な気持ちが交錯するものです。最近は故人とは直接関係のない、会社や取引先等の喪主とのつながりでお声がけをするケースは少なくなりました。同時に、故人と親しかった友人等へも連絡しないケースも増えていますが、それでも亡き方とご縁のあった方々が持っている「お別れをしたい」という気持ちはできるだけ考慮して欲しいと思います。遺族のお悲しみはもちろん大きく重要ですが、ご縁のあった方々にもそれぞれのお悲しみがあり、その気持ちも大切だと思います。やはり、お一人の方の死は、それまで関わり合って生きてきた皆さんにとって大きな出来事のはずです。
それらを考えていただき、後々できるだけ後悔なさらない規模のお葬式を選択してください。
<お葬式の内容や形態の多様化>
お葬式の場所や規模の多様化により、その内容や形態も多様になり、選択肢が増えています。それぞれのお葬式の形態の呼び名は曖昧な部分もあり、正確な定義があるわけではありません。葬送・供養業界で一般的に用いられている呼び名に基づき、内容や形態の選択肢を挙げてみます。
【一般葬】
しばらく前まで、広く全国的に行われていた形式。新聞等に事前に告知し、家族親族だけでなく、隣近所、地域の方々、会社関係者、友人知人等に参列してもらい故人とお別れの場を設けるお葬式。精進落としの会食の席では、遺された家族が、故人亡き後も引き続き関係性を続けて欲しいと願い、故人を偲びながら挨拶を交わしたり、遺族が知らなかった故人のエピソードを聞いたりしながら、故人とご縁のあった多くの方々と悲しみを共有する場としても機能していた。
【家族葬】
家族を中心に少人数で送る形式。その範囲は家族だけに限られるわけではなく、親戚や故人と親しかった少人数の友人等を含む場合もある。一般的には、広く告知することなく、家族と近しい方々だけで送るお葬式を指すが、その定義は曖昧で、極論すれば、ある程度親しい方々に限定すれば「家族葬と思えば家族葬」と言える。家族が知らない弔問客への挨拶や気遣い、多くの方々への連絡や配慮等の「一般葬」で必要だった手間が省かれ、故人と向き合うことができることから、近年最も希望する方が多い形態。
※家族葬に近い形で「密葬」がある。形態は家族葬に近いが、これは後日「本葬儀」を行うことを前提として、その前に身内を中心に葬儀を行う場合の形式を指す。
【直葬】
「ちょくそう」と読むのが一般的だが、お寺様は「じきそう」と読む。葬儀・告別式を行わず、火葬を中心に、少人数の家族だけで送る形式。宗教者が立ち会う場合もあれば、ない場合もある。宗教者が立ち会う場合では、通夜と火葬を行うことが多いが、立ち会わない場合には「火葬のみ」の形を取る。葬儀社により定義は異なるが「火葬式」とほぼ同義。
【一日葬】
一般的には、家族葬から通夜を省き、少人数での火葬と葬儀・告別式を一日で済ませる形式。仏教儀式としては本来、通夜式は身内が集まり、僧侶が臨終を迎える方の不安を鎮め送り出す枕経を上げ、夜通し惜しんでお別れをする重要な意味を持つ儀式であり、寺院によっては通夜を省いた「一日葬」は認められない場合もある。慌ただしい日常を送る現代人の生活様式から生まれた形式。
【無宗教葬】
仏教をはじめ、何らかの宗教的儀式を一切省いた形式。「お別れ会」とほぼ同義と思われる。「死とは何か」「死後の世界はあるのか」といった現代社会でも決して解明できない問いがあり続ける以上、亡き方の死に直面し、宗教に何らかの拠り所を求める方は多く、実際に行う方は少ない。都市圏の分家で、特に菩提寺をもたない家でも、お葬式でお経を上げてくれる僧侶を希望する方は多い。
【生前葬】
亡くなってしまうと、自分自身は誰ともお別れの気持ちをやり取りすることができないので、生前にご縁のあった方々と「亡くなった」ことを想定して集う機会を設ける形式。有名人が行う事例が報道されるが、話題性とは裏腹に未だに普及する気配はない。本人にとっては、死期を覚って行えば意味もあり、集う仲間にとっても価値がありそうだが、元気なうちに行うことが多く、実際に亡くなった時にどう感じるかは、恐らく生前では想像がつかないだろう。またお葬式は、故人のために行う以上に家族親族、ご縁があって一緒に生きた人達のために必要なお別れの場、悲しみと向き合い共有する場であることを考えると、生前葬はお葬式の代用にはなり得ないと思われる。
区分けの仕方によっては、まだいくつかのお葬式の形態があろうかと思います。少なくとも、自分の、家族の考え方によって、またご事情によって選択できる時代になったことは確かです。できるだけご縁のあった周囲の方々の気持ちも含め、納得いく形態を選択して欲しいと思います。
<お葬式の窓口の多様化>
葬儀社は昔から「365日24時間営業」が当たり前の業種です。人はいつ亡くなるのかを選べませんので、連絡があればいつでも対処できる体制を整えています。大切な方を亡くされた時、以前はどこかの葬儀社に直接連絡するのが当たり前でした。しかし最近は、実際にお葬式の施行をお手伝いする葬儀社以外の連絡窓口が増えています。その主な担い手はインターネットを通してお葬式を紹介・仲介する会社です。直接葬儀社に連絡する以外に「ネット紹介・仲介業者」というお葬式の依頼・受注窓口の多様化が生じています。
お葬式の連絡窓口となっているネット紹介業者は、その形態によって2つに分類されます。
・お葬式の依頼を受け、提携葬儀社に紹介・仲介だけをする業者
常にネットに広告を掲載し検索上位になる状況をつくり、依頼を受けたお葬式を全国の提携葬儀社に紹介する。紹介を受けた提携葬儀社が打ち合わせに伺い、お葬式を自社の内容にて施行し、紹介業者に紹介料を支払う。この場合、お葬式の内容は提携葬儀社独自のプラン内容と料金になる。
・お葬式の依頼を受け、統一設定の内容で下請け葬儀社に紹介し施行させる業者
ネット紹介・仲介業者独自の全国統一のプランと料金を設定し、お葬式の依頼を受けると、地域ごとに加盟する下請け葬儀社に紹介し、統一プランでお葬式を施行する形を取る。加盟葬儀社は紹介業者にお葬式代金の中からマージンを支払う。この場合、全国どの地域でもプラン内容と料金は基本的には同じになる。
このように、特にネット上で多様化するお葬式の窓口ですが、お葬式の施行そのものは各地域の葬儀社がすることになります。お葬式はプラン内容や料金の違いも大事な要素ではありますが、「どこの葬儀社の」「どの担当者が」お葬式のお手伝いをするのかも大切な要素だと思います。ネット上の窓口を活用する際にも、「地元のどの葬儀社が実際にお葬式を担うのか」を確かめていただくことも納得いくお葬式には重要なポイントだと思います。
今回は終活の中でも大きな位置を占める「お葬式」について、最近の事情を紹介しました。ご自身のお葬式、かけがえのない大切な方のお葬式を考え、具体的にイメージすることは、よりよい終活への第一歩にもなり得ると思います。是非参考にして、考えてみてください。