ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2021年1月26日

「エンディングノート」は無理して書かなくてもいい

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

最近は「終活」という言葉が定着し、「エンディングノート」を既にご存知の方も多いでしょう。葬送・供養関連業界ばかりでなく、保険・金融関連会社等も独自のエンディングノートを出版し、巷には様々な種類のエンディングノートが溢れ、「書き方講座」も各地で行われています。

私も地域でのご依頼を受け、エンディングノートの書き方も含めた「終活セミナー」をさせていただいています。実は私も、始めた当初はエンディングノートを「是非書いてみてください」とお勧めしていました。しかし、自身で喪主を経験したり、改めて弊社でお手伝いしたご葬儀でのご遺族の実際を見直したり、そして何より自分で書いてみようと挑戦してみたりして、最近ではエンディングノートを「無理して書かないでください」とお伝えするようになりました。

書くことをお勧めしていた当初から感じていたのは、実際に書こうとすると、その手間と時間は膨大になるということです。どのエンディングノートでも、内容は「自分の半生の振り返り」「ご家族に伝えておくべき事柄」「希望する葬送や供養の方法」の三つに大別されます。そのすべてについて改めて考え、記入し、ご家族へ伝えようとするのは大変な作業で、実際に書くことができる方は極少数に限られるだろうと思います。そもそもエンディングノートは、死後の葬送・供養方法も含め、自分の人生を一冊に簡潔にまとめるような作業ですから、大変なのは当たり前ですね。

私は、エンディングノートには本来二つの目的(効用)があると捉えています。その目的を意識し、どちらを選択するかで使い分け、できるだけ無理をせず不要な部分は省くのがよいと思います。一生懸命にエンディングノートを記入したとしても、そもそも法的な拘束力はなく、気持ちや考えを伝える役割に過ぎません。ご家族と日頃からコミュニケーションを取っている方には本来不要な部分も多くあります。

 

<効用その1:この先の人生に活かす>

エンディングノートには、ご自身のこれまで(半生)を振り返り、整理に役立つ項目があります。出生から学生時代の思い出、仕事の記録、大切にしてきた方々や物事等…。日常生活ではなかなか考えることのない事柄について改めて振り返ってみることで「内省・内観」の機会となり、これから先の過ごし方(生き方)を考えることにつながる可能性があります。特に自分の死を意識していない年齢でも、これはエンディングノートの効用のひとつであり、どれだけ記入できるかは別にして、時間をかけてじっくり考えてみるのもよいかと思います。

 

<効用その2:ご家族に伝える>

ご自身の死を意識し、「ご家族(遺される方々)に伝える」ことを重視する場合には、全部記入しようとするのではなく「必要な事柄」に絞り込んで書くことをお勧めします。エンディングノートには「親族関係(家系図)」「お葬式やお墓の希望」「友人知人関係」「財産内容」等々、項目がたくさんあります。その中で「必要な事柄」は人それぞれですが、ご家族の立場になれば、一般的には「友人知人関係」と「財産内容」の最重要な二つに絞り込んでよいかと思います。

もちろん、ご自身が葬送や供養の方法について特段のこだわりをお持ちであれば別ですが、そうでなければ「お葬式やお墓をどうするのか」はご家族のお気持ちにお任せするのがよいと私は思います。ただ、その費用負担のご心配があろうかと思いますので、ご自身の保険等も含めた「財産内容」や「資金準備」はきちんとお知らせしておきたいものです。遺されたご家族にとっては、必ず発生する相続手続きもありますので、「財産内容」はお伝えすべき事柄だと思います。

もうひとつは「友人知人関係」です。ご自身の人生で大切な方々、ちゃんとお知らせしてお別れをしてもらいたい人達は、ご自身にしかわからない場合があります。後日ご連絡があり「なぜ知らせてくれなかった…」と言われてご家族が後悔なさらないように、お名前や連絡先をお伝えしておくのがよいと思います。

それ以外の項目は、私は無理をしてまで書いてお伝えする必要はないのでは、と捉えています。一念発起してエンディングノートを購入され、いつの間にかそのままに…という方も多いことでしょう。ご自身から伝えなければ伝わらないこと、ご家族にお任せすればよいことを切り分けて、必要最小限でお考えいただければよいと思います。

 

<まとめ>

・エンディングノートは無理をして書かなくてもよい。

・エンディングノートの二つの目的「この先の人生に活かす」と「ご家族に伝える」を考える。

・ご家族に任せる事柄、自分が伝えておく必要のある事柄を切り分ける。

・伝える必要のある事柄(項目)に絞り込んで記入する。

・エンディングノートに法的拘束力はない。あくまで「気持ち」や「事柄」を伝えるツール。

最後に、せっかく記入された方は、エンディングノートの存在をご家族にお知らせすることをお忘れなく。