ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年12月21日

continuing bonds(続く絆)

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

故人を偲ぶために、月命日に遺族が集まる日本古来の知恵が、遺族の心のケアにつながる。

葬送や供養の仕事に携わり、その価値を信じている私にとって心強く思える記事に出会いました。

米国の宗教学者で京都大学特任教授をなさっているカール・ベッカーさんが、日本での故人を偲ぶ慣習は、遺族の心のケアにつながる意義深いものだ、とおっしゃっているという内容です。

ベッカーさんは日本人の死生観に魅せられ、研究なさってきたとのこと。記事中で取り上げられている言葉は、私にはどれもが「確かに、同感!」と共感できるものばかりです。

 

・かつての日本には、魂は永遠と捉え、人は死んでもそばにいるという感覚がありました。だから、月命日に遺族が集まり、それがグリーフケア(死の悲嘆を癒す行為)につながってきました。

・今やイギリスやアメリカの一部の病院でも(故人を偲び遺族が集まる機会が)取り入れられています。遺族を病院の会議室に招いて食事をしたり、歌を歌ったり泣いたり笑ったりしています。(その機会は)遺族の孤独や不安な気持ちを和らげ、不眠症やうつ、拒食症、過食症などを防ぐ効果があります。

・葬送や供養の簡略化が進み、火葬だけの「直葬」や仏壇を置かない家が多くなったが、葬儀をきちんと行うことはグリーフケアになります。

・親が「葬儀は不要」と言い残したとしても、親しくしていた親戚や友人に声をかけて行うべきです。それが残された側の心の傷を癒すだけでなく、そこでつながった人との交流が、遺族のその後の人生の支えになります。

・親が「(葬儀を)やらなくていい」と言うのは、子ども達に迷惑をかけたくないという思いからで、遺族にとって葬儀がどれだけ意義深いかはわかっていないと思います。葬儀は故人の大切な人とつながるラストチャンスなのです。

・初七日、四十九日、初盆、月命日などで集まることで、遺族が早く立ち直れます。これはいろいろな研究で証明されているほど明白です。

・日本の慣習なのに、今や日本ではおろそかになっています。欧米では「continuing bonds(続く絆)」と訳されて紹介されています。

 

葬送や供養の意義深さは、言葉でその価値を伝えることは難しく、当事者(送る立場)となり、身をもって体感しなければ実感しにくいものだと感じています。

ここしばらく「(コロナ禍で)思うようなお葬式をしてあげられなかったから、その分、供養はちゃんとしたい」との思いで、お位牌やお仏壇やお墓のことをご相談されるお客様が増えていると感じるのは、ベッカーさんのご指摘にある「continuing bonds(続く絆)」の意義を証明しているのかもしれません。