ためになる!?ぶつだんやさんコラム
2020年11月23日
コロナ禍でのお葬式のかたち
- お仏壇と墓石の太田屋
- 太田博久(代表取締役)
弊社の葬儀会館でご遺体をお預かりしますので、少し時間をかけて、社員の皆さんには会長様のお顔を見てお別れをしてもらえるようにしませんか?
地元でお世話になっている会社の現役会長が急逝されました。まだ60代でした。会長は地域の団体でご一緒した先輩であり、弟の社長ともずっと懇意にさせていただいています。まさかの急逝を受け、私も葬儀担当者と共にご相談しながらお葬式をお手伝いしました。
会長は経営者らしく判断が明確で、強い意志を持って行動される方でした。そのお気持ちをよく理解されている社長は、宗教儀式はしない、お香典はお断りする、身内を中心に小規模で送る、コロナ禍を踏まえ全国のお取引先へはお葬式後にお知らせする、との明確な方針をお持ちでした。そのお考えを尊重しながら、それでも専門家としてよりよいサポートをしたいと思い、せめて社員の方々がきちんとお別れできる機会を確保しましょうと、「お通夜(宗教儀式はないのでお通夜ではありませんが。)」をその場として設けたらどうかとの提案をしました。
実は、私たちの地域は「骨葬(こつそう)」が通常です。葬儀式の前に火葬し、多くの方が弔問に訪れる葬儀告別式の際には故人様はお骨になられています。故人様のお姿に接してお別れができるのは火葬前のお通夜となり、それは身内の方々を中心に執り行われるのが一般的です。各地に支店を持ち、大勢の社員がいらっしゃる会社であり、日頃から会長や社長の社員のへの思いも知っていただけに、もし通常の形式で行えば、社員の方々のお別れの気持ちが宙に浮いてしまうのではないか、と私は思いました。社長も、できることなら社員の皆さんとのお別れの場を設けたいと思っているに違いありません。
コロナ禍でお葬式が変化しているとの話題が多く取り上げられています。直葬・一日葬・家族葬・オンライン葬儀等々…それらの葬儀業界用語で区分けをすれば、「一般葬」とは異なる様々な形態のお葬式をする時代になったと受け止めることができるのかもしれません。しかし、それら区分は業界の都合での形式的な分け方に過ぎず、私はそもそも「一般葬」や「家族葬」などと呼ばれるお葬式など存在していないと思うのです。なぜなら、故人様をどう送って差し上げたいのかというお気持ちはご遺族やご縁のあった方々それぞれで異なるのが当然で、たとえ業界の区分に当てはめたとしても、その内容は一軒ごとに全て違うお葬式になるはずだからです。「〇〇様のお葬式」は存在しても、現実には決して「一般葬」とか「家族葬」というお葬式は存在しないのではないかと思います。
「お通夜」の場には社員の皆さんと、近しい地域のお仲間を合わせて100名を越える方々がお見えになり、会長のお姿に触れながらお別れをしていただくことができました。社長からは「アドバイスをありがとう。あれができて本当によかった…」と声を掛けていただきました。突然のお別れが大きな悲しみではあることに変わりはありませんが、それでもご遺族の皆様に少しでも納得していただけるお別れの場をつくるお手伝いができたことに、いま改めて安堵しています。