ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年11月16日

お別れできずに、後悔して欲しくない

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

「俺の判断は間違ってないよね。太田さん、どう思う?」

知人からご葬儀の事前相談を受けた際に、彼が私にそう尋ねてきました。医師に「お母様は、あと2週間から1カ月」と余命宣告をされたとのことでした。

コロナ禍で躊躇する気持ちもあったけれど、東京で暮らす息子さん2人に話して、病院でお母様に会う機会をつくったのだそうです。そのことについて、今も少し気にかけているようでした。もちろん、帰郷する2人には念のためにPCR検査も受けさせ、病院にも確認したようですが、それでも「万が一」という心配は拭い切れないのだろうと思います。

「母はもう、俺のこともわかっているかどうか…という状態なんだけれど、孫が来たら、わかったみたいなんだよね。涙ぐんで話しかける孫に反応して、母の目から確かに涙が流れたんだよね。不思議なことだね…」

そう語りながら、息子たちに祖母との「お別れの機会」をつくってあげられたことに納得している様子を感じました。私は「それでよかったし、きっとお母様と息子さん2人にとって、とても大切なことだったと思うよ」と、彼の判断に全面的に賛同の意を伝えました。

残念ながら、依然として感染拡大への警戒状態は続いています。そのために、大切な方とのかけがえのないお別れの機会をつくることを迷われたり、断念される場合も見受けられます。もちろん医学的見地に立てば異なる判断もあるだろうとは思いますが、私は葬送や供養に携わる立場の人間として、お別れの機会を失うことで後悔だけはして欲しくない、と強く願っています。去り行く方にとっても、そして残される方にとっても、失ってからでは二度と取り戻せない、かけがえのない機会を是非大切にして欲しい、そう願っています。

お孫さんに手を握られて涙を流された時の記憶は、お母様の人生の大切な宝物になったことでしょう。そして、2人のお孫さんにとっても、これからの人生の中で決して忘れ去ることのない、心にずっと刻み続けていくお祖母様との大切な記憶となったはずだと確信しています。知人にとっても、きっと大切な親孝行の記憶であり続けることと思います。