ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年11月9日

鬼のおはなし

  • 株式会社佐倉幸保商店
  • 佐倉浩徳(代表取締役社長)

現在、大ヒット中のアニメ鬼滅の刃にも登場する『鬼』ですが日本では昔から馴染み深い存在です。「節分」や「なまはげ」などの伝統行事や昔ばなしには欠かせないものです。日常に使う言葉の中にもしばしば登場する鬼、例えば「あの人は仕事の鬼だよね」や最近では『すごい』の代わりに鬼を使う人も多いですよね。

今回は、そんな鬼を仏教の視点でお話します。

『鬼』は、もとは中国から来た言葉です。当初は亡くなった人や霊を表す言葉として使われていました。そのことから『魂』という漢字にも鬼が入っています。しかし日本では仏教の教えや文化のなかで『鬼』という存在は独自の進化をしていきます。

仏教では生前、罪深い行いをした亡者は餓鬼道(がきどう)という世界に行き餓鬼という鬼になります。その姿はやせ細り、常に飢えと渇きに苦しみ続けなければいけません。子どものことを『ガキ』と呼ぶようなことがありますが、お腹を空かせてなんでも欲しがるような子どもの姿が餓鬼のようだということからきているそうです。
また餓鬼とは違う鬼の存在もあります。地獄にいる鬼です。地獄の鬼はそこに堕ちた亡者の管理者のような役割をする鬼です。餓鬼道にも行けない重罪を犯した者が堕ちる地獄なので、そこで管理しているとなると、かなりのスパルタで屈強な姿です。皆さんが思い描く鬼に近いイメージではないでしょうか。しかし鬼は、ただ怖いだけの存在ではなく、閻魔大王の配下で地獄に堕ちてしまったものに罪を償い更生させようとしているのです。地獄もまた罪人を更生させるために存在するというのは、仏教の慈悲深さを感じますよね。

最後に守り神としての鬼です。
『羅刹』『夜叉』という鬼はもともと仏法に敵対し罪を犯していましたが、お釈迦さまに調伏(ちょうぶく)され仏法を守る鬼神となりました。調伏って難しいですよね。仏教語ですが、ものすごく簡単に言うと仏教において悪行や煩悩を制圧することです。
仏教世界を守る神として有名な四天王も、像や絵になると足元に鬼が踏みつぶされているものがあります。その鬼も調伏され、以後は四天王に使え共に仏教世界を守るものとなるのです。お寺には鬼が四隅にいたり日本最古といわれる奈良の法隆寺の五重塔には梁を一生懸命支える鬼がいます。そういえば家の屋根に飾られる鬼瓦も悪いことが入り込まないよう守ってくれています。こんな風に鬼も恐ろしい一面だけではなく、守り神という側面も持っているのです。

ちなみに我々がイメージする角がありトラ柄のパンツを履いている鬼の姿は、十二支から来ています。昔方角などを十二支で表していたとき、不吉な方角(うしとら・東北)の鬼門が牛と虎の間だったことから、牛の角と虎のパンツに結び付いたそうですよ!