ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年10月27日

仏壇店と尺貫法(しゃっかんほう)

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

お仏壇だと「欅18×43」とか、お仏像だと「座釈迦・桧六角台座2.5」、お位牌だと「呂色塗り5.0」、お墓だと「和型・黒御影尺1寸角」…仏壇店で取り扱う商品名には、サイズを表す数字の付いたものが多いことにお気づきでしょうか。建築関係でもよく出会うことがありますが、仏壇仏具や墓石等の宗教用具の世界では、今も商品表示にいわゆる「尺貫法」が使用されることが多くあります。

1尺(しゃく)は約30.3㎝、1寸(すん)は約3.03㎝の長さになります。※「一寸法師」の「一寸」です。

1尺は元々「親指と人差し指を広げた幅」で、時間の経過と共に段々広くなったとの説があり、また1寸は1尺の十分の一ですが、元は親指の幅だったとの説もあります。

日常生活ではほとんど使われなくなった長さの単位ですので、馴染みの薄い方が多いかと思います。それに加え、実はお仏壇やお仏像といった種類によって「どの部分の長さを表すのか」が異なっていて、それが更にややこしさを増しているのです。

冒頭に挙げた事例をひとつひとつ「翻訳」していくと、お仏壇の「欅18×43」は、「主要な材質が欅(けやき)」で「扉を閉めた胴体幅が1尺8寸(約54㎝)」で、「本体の高さが4尺3寸(129㎝)」の商品を表しています。

お仏像の「座釈迦・桧六角台座2.5」は、「座ったお姿のお釈迦様」で「材質が桧(ひのき)」で「台座の形が六角形」で、お釈迦様の「白毫(額のほくろ状の突起)からおみ足(足部分)までの長さが2.5寸(約7.5㎝)」となります。

お位牌の「呂色塗り5.0」は、塗りの技法が「呂色塗り」で、お戒名を書く部分「札丈(ふだたけ)」の長さが「5寸(約15㎝)」を表します。

お墓でも「和型・黒御影尺角」は、「縦に長い従来型タイプ(和型)」で「材質が黒御影石(くろみかげいし)」で、メインとなる棹石(さおいし)の幅が「1尺1寸(約33㎝)」のお石塔となります。

このような商品名での寸法表示だと、現実に家のスペースに合うのか否か判然としませんので、実際に仏壇店にいらっしゃれば、幅や高さや奥行き寸法を「㎝」で表示してあるかと思います。それでも供養業界の慣習なのでしょうか、今も「尺・寸」という表示がなされ、「翻訳」が必要な商品名が多く残っています。そういえば、お客様のお宅でお仏壇を安置するスペースを確認し測る作業を普通に「採寸(さいすん)」と呼んでいます。

お客様にとってはわかりにくい商品名も多いかと思いますが、どうかご容赦いただき、是非とも仏壇店スタッフに「翻訳」を頼んでみてください。もしかしたら、予想外に楽しんでいただけるかもしれません。