ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年9月21日

お彼岸(ひがん)と中道(ちゅうどう)

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

日本でその名をよく知られた仏教行事は、夏の「お盆」と、春・秋の「お彼岸」かと思います。

この二つの行事は、仏教の「彼岸(ひがん)」と「此岸(しがん)」という考え方に沿って理解しようとすると、とても面白く、興味が湧くのではと思います。

「彼岸」は三途の川をはさんだ「彼の岸(向こう岸)」を表し、悟りを得た方々(覚者=仏陀)の世界、つまり浄土の世界です。そして「此岸」は「此の岸(こちら岸)」で、悟りに至らない煩悩だらけの私たちの世界です。

お盆は、彼岸の世界にいるご先祖が、私たちの此岸の世界に帰ってくるとされる行事で、迎え火と送り火で送迎します。つまりご先祖と私たちの関係に当てはめると「彼岸⇒此岸」という方向性になります。その反対に、お彼岸では、私たちがお墓参りに行く行為が中心で、いわば「此岸⇒彼岸」という方向性になります。もちろんお盆にもお墓参りはしますが、その行為には「お迎えに行き、帰りに送る」という要素が含まれているのに対し、お彼岸のお墓参りには、純粋に「私たちから彼岸に近づいていく」という意味を感じます。

お彼岸は、お墓参りに加え、意識的に仏教に触れ、学び、少しでも実践しようとする、私たちにとっての「仏教強化週間」とも言えます。春は「春分の日」、秋は「秋分の日」を中心に前後一週間がお彼岸とされています。その間に、日頃はつい疎かになりがちな仏教(お釈迦様の教え)を改めて学び直してみよう、それがお彼岸の基本とされます。この仏教を学び、実践しようとすることも、私たちが彼岸に近づこうとする「此岸⇒彼岸」の方向性を持つ行為だと思います。

ただ、一口に仏教といっても、その内容はあまりにも膨大です。仏教者でもない私たちは、何から学べばよいのかすら戸惑ってしまいますよね。

お彼岸のお中日(ちゅうにち)は「春分の日」と「秋分の日」です。この両日は、昼と夜の時間の長さがちょうど同じようになる頃とされます。その時期も踏まえ、お彼岸には、主にお釈迦様の「中道(ちゅうどう)」の教えを学ぶことが勧められています。

「中道」とは、物事の中間を表すようですが、それは決して平均や二つの間の中ほどといった意味ではなく、「どちらか極端にならず、とらわれを離れ、厳しく現実の真の姿を見極め、正しく判断し行動せよ」という教えだそうです。

とはいうものの、私にはとても難しい思想で、やはりなかなか理解ができません。今の私は、「かたよらない心・こだわらない心・とらわれない心」という言葉で少しでも理解に近づこうと努めています。