ためになる!?ぶつだんやさんコラム

2020年8月4日

お墓参りの思い出

  • お仏壇と墓石の太田屋
  • 太田博久(代表取締役)

「お墓にいる生き物は、誰かの生まれ変わりかもしれないから捕まえてはいけないよ。」

私のお墓参りは、弊社創業者の祖父のお墓から始まりました。私の生まれるひと月ほど前に他界したので、写真でしか顔を知らない祖父です。

子どもの頃のお盆のお墓参りは、普段会わない親戚が集まる機会でもありました。久しぶりに従妹に会うことやお墓で飛び回るトノサマバッタを捕まえるのが楽しみで、一緒に暮らしたことのない祖父への供養という感覚は、どうもピンと来ていなかったように思います。トノサマバッタを追い回していると、祖母や母から冒頭の言葉をよく言われたものです。

祖母が亡くなり、父もお墓に入った今になると、同じお墓なのですが、私には明らかに供養の場としての意味が強くなっています。最近は時代も変わり、お墓参り自体が親戚一同の集まる機会になりにくいこともあり、子どもの頃のような「楽しみ」を感じることはありません。

それでも、私にとってのお墓参りのイメージは、今でも懐かしい人達と、その人達との関係性を郷愁を伴って思い出すものであり続けています。その関係性は、きっと私自身を形づくった大きな要素であり、その要素への愛着がお墓参りを通して呼び起こされるのかもしれません。この感覚は、故郷という言葉に重なる気がします。

捕まえてはいけないと言われても、昆虫好きだった子どもの私の衝動は抑えられません。追いかけ回して捕まえたトノサマバッタの顔に、写真の祖父の顔をじっと重ねてみます。思い直して両手で空へ解き放つと、トノサマバッタは滑るように遠くまで飛んでいき、その線のような飛行の軌跡を最後まで必ず見届けたものです。